明心宝鑑

<千字文>、<蒙求>とともに朝鮮時代の子供たちの代表的な入門書。中国古典の中から教訓になるような良い句を 集めて編集した本である。原本は上下巻20篇798条だが、抄略本は19篇247条で構成された。抄略本の体裁は 啓善篇・天命篇・順命篇・孝行篇・正己・安分篇・存心篇・継性篇・勤学篇・訓子篇・誠心篇・入教篇・治政篇・治家篇・安義篇・準礼篇・言語篇・交友篇・輔行篇で なっている。版本によって、増補篇・八般歌・続孝行篇・廉義篇・勧学篇などが付いている。原本の編纂者は中国明王朝の時の 人物である范立本という説が学界の支持を得ており、高麗忠烈王時代の文臣である秋適という説も提示されている。​

○ 度量の大きい人には福が来る。あらゆることに寛大であれば多くの福を受ける。

○ 自分をおとしめることを知る人になれ。敬行録にこんな言葉がある。自分を低くすることができる人は 重要な地位に就くことができ、人を勝ち負けを好む人は必ず敵に出会う。

○ 過度な考えは精神の健康を害する。過度な考えはただ精神を傷つけるだけであり、分別なくする行為は 自分自身に災いをもたらす。

○ 他人の言葉を簡単に信じないでください。孔子はいった。多くの人が彼を憎むとしても必ず調べてみ て、多くの人が彼を好むとしても必ず調べてみなければならない。

○ 過度に欲張ると心配事が多くなる。敬行録にこんな言葉がある。満足を知っていれば楽しく、過度に 欲張れば心配事が多くなる。

○ 蒔いたものは収穫する。キュウリを蒔けばキュウリが収穫され、豆を蒔けば豆が収穫される。天の網は広く 広くて、粗雑のようだが、過ちに対しては逃さずに罰を与える。

○ 機会を逃さないでください。敬行録にこんな言葉がある。迫り来る災難は幸運によって避けることが できず、福を逃すと再び探しても見つからない。

○ 友を選ぶように付き合うと後悔がない。

○ 知恵は経験から得られる。一つ経験しなければ一つ知恵が育たない。

○ 自分自身を自慢しないでください。君子はいった。自分が正しいと思っている人は明確に判断することが できず、自分が満足している人は目立たず、自分が誇っている人は功績がなくなり、自分が自慢する人は長く続かない。

○ 他人をののしることは、空に向かってつばを吐くようなものだ。悪人が善人をののしるなら、知らんぷり をすればいい。知らんぷりをし、答えなければ心が楽になり、ののしる人の口だけが痛むだけだ。これは、寝ながらつばを 吐くと自分に返ってくるのと同じだ。

○ あまりにも細かいことを気にしないでください。舜はいった。無駄な言葉や、度を越して細かいことを 気にすることはしないでください。

○ 誰にでも学ぶべきことがある。孔子はいった。3人が道を歩けば、必ず私の師がいる。善い人からはその 善さを学び、悪い人からはそのことを見て自分の過ちを反省することができる。

○ どんなに腹が立っても我慢しなければならない。一時の怒りを我慢すれば、百日の心配を免れることができる。

○ 他人を傷つけようとすれば、自分自身が先に被害を受ける。太公望はいった。他人を判断しようと すれば、まず自分自身から考えてみなさい。他人を傷つける言葉は、かえって自分自身を傷つけることになるので、 血を飲み込み、他人に吐き出すと、まず自分の口が汚れる。

○ 私を褒める人を用心しなさい。孔子はいった。私を悪く言う人は私の師であり、私を褒めるだけの 人は私を傷つける敵だ。

○ 敵を作らないでください。敬行録にこんな言葉がある。人と敵対するのは災いを蒔くことであり、 善を捨ててやらないことは自分自身を傷つけることだ。

○ 勝手なことを言わないでください。老子はいった。他人に知られてはいけないことは、最初からしない のが一番良く、他人がああだこうだ言わないようにするには、最初から何も言わないのが一番良い。

○ 片方の言葉だけを信じてはいけない。片方の言葉だけを聞くと、お互いに別れることになる。

○ 一言で千両の借金を返す。無索はいった。言葉遣いが上手いことが、千金を持つよりも役に立つことが あり、一度行動を誤ると、毒蛇に噛まれたよりも苦しむことがある。

○ 他人を軽視しないでください。太公望はいった。自分が優れていると思って他人を軽視してはならず、 自分が大きいと思って小さな人を軽視してはならず、勇気を信じて敵を軽く見てはいけない。

○ 力で他人を制しようとしてはいけない。孟子はいった。力で他人を制しようとすれば、表面上は従うふりを するが、心から従わない。力が足りないからだ。徳で他人を従わせようとするなら、心から喜んで、心から従うように なる。